​『日本カネ意識 欲求と情報を管理するクレジット社会』は、精神科医であり評論家の野田正彰氏によって1984年に情報センター出版局から刊行された書籍です。​本書は、日本社会における金銭意識とクレジット社会の実態を、精神医学的視点から分析しています。

出版情報

項目詳細
出版社情報センター出版局
発売日1984年12月
ページ数259ページ

本の概要

本書は、日本人の金銭に対する意識や行動、特にクレジット(信用)を基盤とした消費社会の構造とその影響について、精神医学的視点から深く掘り下げています。​野田氏は、クレジット社会が人々の欲求や情報をどのように管理し、個人の心理や社会全体にどのような影響を及ぼしているかを、多角的に分析しています。​

著者について

野田正彰氏は、1944年生まれの精神科医、評論家であり、北海道大学医学部を卒業後、長浜赤十字病院精神科部長などを歴任しました。​その後、神戸市外国語大学、京都造形芸術大学、京都女子大学、関西学院大学などで教授を務め、社会精神医学や文化精神医学の分野で多くの研究と著作を発表しています。​主な受賞歴としては、1987年に『コンピュータ新人類の研究』で大宅壮一ノンフィクション賞、1992年に『喪の途上にて』で講談社ノンフィクション賞を受賞しています。

評価と感想

本書は、1984年の刊行当時、日本社会におけるクレジット利用の拡大と、それに伴う消費行動や価値観の変化を鋭く捉えた作品として評価されました。​野田氏の精神医学的視点からの分析は、単なる経済的視点にとどまらず、人々の心理や社会構造の変遷を浮き彫りにしています。​現代においても、クレジット社会の問題点や人々の金銭意識を考える上で、示唆に富む内容となっています。​

重要なポイント

本書の中で特に注目すべき点は、クレジット社会が個人の欲求や情報をどのように管理し、人々の行動や価値観に影響を与えているかを詳細に分析している点です。​また、多重債務者の心理的ダイナミズムについても触れられており、借金の焦燥感が債権者の数に比例して増加することなどが指摘されています。

まとめ

『日本カネ意識 欲求と情報を管理するクレジット社会』は、日本人の金銭意識とクレジット社会の実態を精神医学的視点から分析した一冊です。​刊行から時間が経過していますが、現代の消費社会や金銭に対する価値観を考える上で、依然として多くの示唆を与えてくれる作品です。​金銭に関する社会的・心理的側面に興味のある読者にとって、有益な一冊と言えるでしょう。