
『若き日の哀しみ』は、旧ユーゴスラビアの作家ダニロ・キシュによる自伝的連作短編集であり、第二次世界大戦中の少年時代の記憶を叙情的かつアイロニカルに描いています。
出版情報
項目 | 詳細 |
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出版社 | NHK出版 |
発売日 | 2022年4月27日 |
ページ数 | 217ページ |
ISBN | 978-4140818992 |
本の概要
本書は、第二次世界大戦中に少年時代を過ごしたアンディ少年の視点から、戦時下の日常や家族、友人、そして愛犬との関わりを描いた19編の短編から構成されています。
戦争の悲劇的な背景の中で、少年の純粋な視点が鮮やかに描かれています。
著者について
ダニロ・キシュ(1935年生まれ)は、ユーゴスラビアのスボティツァ市出身の作家です。
ユダヤ人の父親は強制収容所に送られ、帰らぬ人となりました。
ベオグラード大学で比較文学を学び、作家として活動する傍ら、詩作品の翻訳も手掛けました。
彼の作品は20以上の言語に翻訳され、国内外で数々の賞を受賞しています。
評価と感想
本書は、戦争の悲惨さを直接描写するのではなく、少年の日常を通じて間接的に戦争の影を浮かび上がらせています。
その淡々とした筆致が、逆に読者の心に深い印象を残します。特に「少年と犬」のエピソードは、多くの読者の涙を誘い、心に残る作品となっています。
重要なポイント
第19章「少年と犬」は、アンディ少年と愛犬ディンゴとの別れを描いた感動的な物語です。
戦時下の混乱の中で、最も信頼していた存在との別れが、少年の心に深い傷を残す様子が描かれています。
この章は、戦争が人々の日常や大切なものをどれほど無情に奪っていくかを象徴しています。
まとめ
『若き日の哀しみ』は、戦争という過酷な状況下での少年の視点から、人間の純粋さや喪失感を描いた作品です。
直接的な戦争描写を避けつつも、その影響を巧みに表現しており、読者に深い感動を与えます。
戦争の悲惨さや人間の強さ、そして哀しみを静かに伝えるこの作品は、多くの人々に読まれるべき一冊です。